ダチョウ飼養管理技術の実証

 実験農場では、平成9年度からダチョウの親鳥十数羽、育成鳥十数羽を保有し、繁殖、産卵、孵化、育雛、育成、肥育等の各段階について飼養管理技術の実証試験を行ってきた。

 ダチョウは、人間の食糧と競合しない飼料資源を活用する等の観点から家畜としての有効活用の期待がもたれ、現在沖縄から北海道まで全国に1万羽弱が飼養されている。

 しかし、わが国の環境条件下の飼養技術としてはその歴史が浅いこともあり、管理技術には多くの問題を抱えているのが現状である。

 このため基本技術の確立や食品製造副産物等を利用した低コスト飼養管理技術の確立を目指し実証試験を行ってきたところであるが、平成19年度をもって当研究所におけるダチョウ関係事業は終了した。

 本事業の成果として「ダチョウ飼養管理マニュアル」を次のとおりとりまとめた。

アフリカンブラックのオス(左)とメス
日本農研実験農場(つくば市)で撮影

【ダチョウ飼養管理マニュアル(PDF)】
   Tはじめに〜ダチョウの概要
   U管理技術
   V飼料と給与法、病気と衛生管理
   W生産物と利用、生産事例紹介

ダチョウについて

ダチョウ(駝鳥、オストリッチ、Ostrich、Camelbird)

目 (Order)    : ratite(走鳥目)vs:carinate(峰胸目)
科 (Family)   : struthionidae(ダチョウ科)  
属 (Genus)   : struthio
種 (Species)  : struthio camelus

cf. 走鳥目―――5亜目
  @ Ostrich:アフリカ                                
  A Rhea(rheiformes):南アフリカ
  B Cassowary birds(casuariformes):1.Emu:オーストラリア 
                2.Cassowary(ひくい鳥):ニューギニア
  C Kiwi(apterygiformes):ニュージーランド
  D Tinamous(tinamiformes):中南アメリカに住む“うずら”に似た鳥

 Struthio camelus

 ・Struthio camelus australis(South African or Zulu ostrich)
   :南アフリカに棲息していたが、ケープ地方では絶滅。ブルーネック系。
 ・Struthio camelus camelus(Mali or Barbary ostrich)
   :北アフリカ。レッドネック系。
 ・Struthio camelus maassaicus(Massai ostrich)
   :東アフリカ。レッドネック系。
 ・Struthio camelus molybdophanes(Somali ostrich)
   :エチオピア、北ケニア、ソマリア。ブルーネック系。
 ・Struthio camelus syriacus(Arabian ostrich)
   :シリアに棲息、1960年に絶滅。レッドネック系。
 ・アフリカンブラック(African Black、Oudtshoorn Hybrid、Black-neck)Struthio camelus(varietas)domesticus
   :南アフリカのケープ地方に棲息していた南アフリカダチョウ(S.c.australis)と、シリヤ産バーバリダチョウ
    (S.c.camelus)の交配から作出され、domesticus というラテン名がつけられた(Swart)。
    家禽化が進んでおり、小型であるが、飼育しやすく、経済形質が優れている。
    現在飼育されている主要種。

 ――特 性――
 寿 命 :50〜60年。
 身 長 :2.10〜2.50m。生存している地上最大のトリ。
 体 重 :105〜125kg。
 速 度 :時速60〜70km。
 食 性 :雑食。盲腸が発達していて繊維性飼料を良く利用できる。‘そのう’は無い。
 体 温 :37〜39℃。環境適応性が高い。
 性成熟 :雄 2.5〜3.0歳。雌 2.0〜2.5歳
 繁殖期 :北半球では3月中旬から始まり、9月に終了。
 産卵数 :年 30〜80個。最高100個。2日に1個。午後に産卵。
 卵 重 :1200〜1800g。
 卵 格 :長径 17〜19cm。短径 14〜15cm。
 孵 化 :41〜42日。
 骨 格 :4cmの厚さの胸骨を持つ。竜骨を持たない。
  肉   :アフリカンブラックでは12〜14月齢で食肉処理。生体重100kgから33kgの肉がとれる。
       脚の肉が中心。赤身肉。収入の約14%を占める。
       鶏の肉に比し、脂肪、コレステロールの含量が少なく、エネルギーが低い。
  皮   :と殺時に約1.25平方メートル。収入の約60%を占める。羽軸根跡(クウイルマーク)が特徴的。
       滑らかで、耐久性に富む。日本は最大の輸入国。
  羽   :と畜時に約2kgの羽がとれる。繁殖用ダチョウは16月齢から8〜9月おきに採取。
       収入の約11%を占める。羽絲は羽軸に左右対称にはえ、羽鉤が無い。
 観光等 :収入の約15%(南アフリカ)。
 運動場 :1ペアーで400平方メートル。フェンスは150cm以上。

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